清水の歴史と現在が交わる舞台、青龍

「記憶を刻み、未来へつなげる」ホテル


日本の文化体験を提供してきたTOKIが、独自のコンセプトで収集したアート作品を堪能することができるホテルをご紹介。

これからさらにアートに詳しくなりたい方、美術館よりも身近に感じたいなど普段の鑑賞から一歩踏み込んだ体験をしたい方はもちろん、旅に慣れ、いつもとは違う刺激を感じられるホテルを知りたいという方に、洗練されたホテルをピックアップしてご紹介します。


今回は京都にゆかりのある作家の作品や、小学校としての歴史を持つホテルとして観るものに幼い頃の記憶を呼び起こす品を中心に収集されている、ザ・ホテル青龍 京都清水をご紹介します。清水寺や八坂神社周辺にあり人気観光地にほど近く、京都やホテルの歴史と現代アートの共鳴を楽しむのにうってつけのホテルです。

出典:ザ・ホテル青龍 京都清水 公式サイト | The Hotel Seiryu Kyoto Kiyomizu プリンスホテル

https://www.google.com/url?sa=i&url=https%3A%2F%2Fwww.princehotels.co.jp%2Fseiryu-kiyomizu%2F&psig=AOvVaw2jpHnO5Mab10b_6G-lk59N&ust=1646790416432000&source=images&cd=vfe&ved=0CAsQjRxqFwoTCKi5weOztfYCFQAAAAAdAAAAABAD

The Hotel Seiryu Kyoto Kiyomizuとは

観光スポットとして人気が高い清水寺や八坂の塔のほど近くに佇むザ・ホテル青龍 京都清水。

青龍の前身である清水小学校は、京都独自の体制である番組小学校として明治2年に開校しました。番組小学校とは学び舎としてだけでなく、地域自治の拠点や伝統的コミュニティに深くかかわる施設としての役割も担った小学校を指します。昭和8年には移転改築され当時浸透しつつあった鉄筋コンクリート校舎となり、東山の傾斜地の特性を活かし中央の大階段でつないだコの字型の棟や、東棟のスパニッシュ瓦葺などその個性あふれる立地やデザインが評価されてきました。

出典:The Hotel Seiryu Kyoto Kiyomizu|コンセプト プリンスホテル

https://www.seiryukiyomizu.com/assets/common/images/concept/concept_pc_04_03.jpg

この校舎を活用して建てられたザ・ホテル青龍は、伝統的な建築の意匠や、小学校時代に生徒が残した傷や素材を残しながら、現代にふさわしい利便性と上質さを兼ね備えたホテルです。コンセプトは「記憶を刻み、未来へつなげる」。前身である旧清水小学校の歴史を継承しつつ、この場所にしかない体験を提供し訪れる人に新たな思い出が蓄積される場所となっています。

ザ・ホテル青龍の館内には、現代の作家によるアート作品が展示されています。その多くは京都にゆかりのある作家の作品であったり、小学校であった青龍の建物の中で、鑑賞者自身の幼き頃の記憶を呼び起こし、思いをはせるような作品です。多様な感情や感覚を秘めながら、観る者に美しくやさしく語り掛けます。

アーティスト紹介


ここではThe Hotel Seiryu Kyoto Kiyomizuがエントランスや朝食レストラン、客室など各所に展示している作品のアーティストをご紹介します。

畑 眞吾 (陶芸)

シンプルさの中にある作家の個性と使いやすさ

古いものや伝統的な仕事を手本にしながら今の空気を感じさせるシンプルでモダンな作風、一見おとなしいがはっきりとした作家としての個性や美意識、使い手に語りかけてくる強さもあり名匠としても大きな人気を博す。ホテルのために作り下ろしたものとして、日本の栗の木を用い、全客室の入隅盆と茶托、うちスイートルームは入隅盆と我谷盆の2種類を手がけた。内田智裕の凛としたたたずまいの白磁の器を目に優しい木目とデザインで引き立て、縁の立ち上がりや厚みの加減で絶妙のフィット感を生んでいる。

染司よしおか・吉岡更紗(染織)

天然の素材のみから作り出す伝統色

平安時代より伝わる鮮やかな伝統色を化学染料を使わず植物染(天然染料・草木染め)のみで再現し、古来の染織技法の究明、寺社の伝統行事や国宝の修復も手がける工房。江戸の昔より6代を重ね、職人の手により、温かさや命の源を感じさせる深みのある色を生み出している。

ホテルのイメージを4種類の日本古来の色で表現し、「古代紫」で京都を、「縹色」で流れる水を、「青緑」で四方に連なる山を、「黄丹」で学舎を表し京都の情景と重ね合わせている。

川人綾(絵画)

「制御とズレ」をテーマにグリッドを用いた表現を展開

染織を学んだ彼女はその緻密な手作業から生まれた歪みとともに神経科学における視覚と認知の「ズレ」により生じる錯視効果の共通性に注目する。脳を通して見ることを意識させることを目指したその絵画は、作品としてのユニークさや美しさも見る者を引き付ける。

ロビーカウンター前の長さ約5.8mに及ぶ大作「CU」は、清水寺開創の起源で寺名の由来となった音羽の瀧をイメージした作品。流れ落ちる水を思わせる白いストライプを中心に背後に格子模様を配置し、東山の守護神である青龍の衣を表す金色をアクセントに入れている。一見デジタルに思われる作品だが、近くで見ると手作業とわかるズレに着目しあえてそのままに表現として取り込んでいる。見るたびに変化する印象によって人知を超えた領域の存在を鑑賞者と共感することを試みている。

今村遼佑(絵画)

日常の記憶や気づきをたぐり寄せ、ものごとの確かさや不確かさを探求

個体と場所の絶妙な距離感を保ちながら音や光などの現象を用いて場を転換させるインスタレーションや映像作品を制作している。五感を刺激する作品によって、鑑賞者は普段気に留めない音や香り、手触りといった生活の繊細な感覚に改めて気づくことができるのである。

内田智裕(陶芸)

白を基調とし、迷いのない曲線が特徴的な作品を制作する陶芸家

人の手を感じさせないほど繊細に美しく作りこまれ、凛としたフォルムは空間に溶け出すような調和を与えながらも存在感を放つ作品を制作している。白い粘土を使う白磁が世界から評価される彼の師匠・黒田泰蔵から技術とその精神性を受け継ぐ。

木村秀樹(版画)

シルクスクリーンを日本に広め、技法を用いた代表作『鉛筆』は余白を大きく使いモチーフを断片的に用いた斬新な構図であり版画界では知らない人はいない有名な作品である。そのほか『水鳥』シリーズ、モンドリアン作品写真をアレンジした『ミスティーダッチ』シリーズが有名である。

樂 雅臣(石彫)

自然との深い対話から始まる作品作り

素材の石の形を見極めてから作品の設計図を考えるスタイルで、自然との正面からの対話を心がけている。展示されているのは自然界の共存共栄がテーマの「輪廻」シリーズ。研磨による人工的加工と黒御影石の原石のままの表現を両立させ、自然を支配することなく共存を生み出す形態をとっている。その造形は古代日本で用いられた打製石器を彷彿とさせ、自然と人間の親密な関係性を表しているかのようである。屋外エントランスの縦に長いフォルムの作品「輪廻 青龍」は、人と人を繋ぎ、安らぎの時への道しるべとなることを思い、織物を織るときに経糸の間に緯糸を通す道具のシャトル(杼)、時計の針、日時計をイメージしながら制作された。

大島奈王(陶芸)

出典:コンセプト - THE HOTEL SEIRYU KYOTO KIYOMIZU プリンスホテル

https://www.seiryukiyomizu.com/assets/common/images/concept/concept_pc_06_05.jpg

自分の宝物にしたくなる、絵本の挿絵に出てくるような愛らしい作品を生み出す陶芸家

生活に溶け込みながらも使い込まれたようなレトロな質感が特徴的。デンマークと日本を行き来しながら活動をしている彼女が制作する自然の動物や昆虫、植物をモチーフにした作品たちは、一つ一つが物語の世界からそのまま出てきたようなファンタジーを感じさせつつ個性を放ち作品自体が息をしている感覚をもたらすようである。

かみ添(唐紙)

伝統と現代の職人の手作業のコラボレーション

出典:The Hotel Seiryu Kyoto Kiyomizu - 西岡ペンシル 西岡ペンシル

http://www.nishiokapencil.co.jp/wp-content/uploads/2020/09/Guest-Room-2-1166x1536.jpg

唐紙は中国から渡来した紙に由来し、手紙や書道、襖に貼るための紙として使われてきた。公家文化が構築されてきた京都は装飾性が高い唐紙の名産地である。京都の西陣にある工房・かみ添では古典印刷技術の「型押し」を版木を使って手摺りにより文様を移す伝統的な方法を受け継いでいる。職人の作業が感じられ、同じものがないというのが手摺りの魅力である。ホテルが所蔵する「金魚 “Gold Fish”」は、摺ったときの手の動きを感じさせるインクが縦に走っており、金魚が水に飛び込むときの小さい一瞬の水しぶきを表現しているかのようである。

岸野承(彫刻)

内側に眠るいのちある本質の存在を掘り当てる

寺院、神社から譲り受けた古材や拾った流木などを素材とし、それぞれ異なったストーリーを持つ木のオリジナリティを活かし、僧などの人の姿に仕上げる。作品となった静謐に佇む自然がリアルな形を持って語り掛けてくるようである。

佐藤聡(ガラス)

日本の暮らしになじむガラスを追求

透明なガラスに螺旋や波形のような模様を刻み込むスタイルが代表的である。かわいらしい模様は一つひとつ人の手で彫られており、太陽の当たる場所に置いて光の反射をずっと眺めたくなるような作品である。他にもすりガラスで仕上げたり錆を感じさせる加工が施されている作品も手がけており、いずれも食事や花を引き立たせ、シンプルで使いやすいよう工夫されている。

佐藤雅晴(絵画)

現実と非現実が交錯する独自の世界観

カメラで撮影した日常の風景をパソコン上でペンツールを使ってトレースしアニメーション化する「ロトスコープ」という技術で映像作品を制作。コンピュータ上で色を重ね写真の繊細さを絵画で表現する試みである「フォトデジタルペインティング」を独自に編み出した。現代美術、映画、アニメ、メディア・アートの表現領域を超えた活動を行う。作品には現実と非現実が重なる未知なる領域に踏み込む感覚が感じられる。

田淵太郎(陶芸)

独自の焼き方から生み出された唯一無二の白磁の色

出典:コンセプト - THE HOTEL SEIRYU KYOTO KIYOMIZU プリンスホテル

https://www.seiryukiyomizu.com/assets/common/images/concept/concept_pc_06_03.jpg

白磁を主に制作する陶芸家。薄いベールのような釉薬が美しい。彼が作り出す白磁は、焼成時に通常使われる匣鉢(さや)をあえて使わず炎に直接当て窯変させ色を出す彼独自の焼き方を取り入れ、白いだけではない白磁の魅力を引き出している。

辻村史朗(水墨画・油絵・陶芸)

作品の裏にある作家の生命力に満ちた生き方

作品が海外の美術館に収蔵され数少ない陶芸家のうちの一人。奈良の山奥にある家や窯は自力で作り、師を持たず作陶を独学で学ぶ生命力溢れる生き方を体現する。30歳の時に初の個展を開催して以来、国内外から大きな注目を受ける。

作品はメトロポリタン美術館など海外の美術館に収蔵されており、そのような陶芸家は数少ない。大胆で豪快な造形美、存在感溢れる作風が魅力で、割れや破裂などあえて残した作品も制作。

ノーマン・カーヴァ(写真)

日本建築のデザインに魅了されたアメリカ出身建築家

出身地・アメリカでは前衛的建築雑誌の編集を担うなど建築家として大きく活躍した。第二次大戦の際兵士として京都に滞在して以来日本建築の魅力に目覚め、帰国後は京都大学建築科に留学。以降京都・奈良を中心とする歴史的な建築の研究に尽力した。彼の写真は日本建築のデザインに対する熱い視線から、その本質をとらえていることで高い評価を得ている。

松田啓佑(絵画)

独特の感性から世界の再解釈に挑む

独特な色彩感覚から生み出される、大きな筆で大胆に構成された線は意思を持っているかのように強く、かつシンプル。自分自身を媒介に「世界」をとらえる表現方法を模索しながら主に抽象的な絵画を制作している。

松田匠也(陶芸)

青白磁と桃白磁が美しい陶芸家。作品の丸みを帯びたフォルム、色がじんわりと浮かび上がってくるような柔らかい色は思わず手で包みたくなる。